と、語ったのはブラジルの極真カラテの磯部清治師範。
「幸せになる」とは、お金を得ること。家を買い、アパートを買い、家族を養い、道場を建てたこと。ブラジルで仕込んだ「弟子」をもって、K-1の世界に足を踏み入れ、一試合で数千万円を稼ぐファイティングマシーンを作り上げた磯部師範は語りました。
プロ格闘技の世界。そこでは極真カラテの世界王者になってもつかめない金を、一瞬で手に入れることができるのです。
その、ブラジル極真が第3の矢を放ちました。これまでK-1に参戦してきた先輩以上の潜在能力を買われた現役の王者。その名もエヴェルトン・テイシェイラ。26歳。
かつて熊殺しの異名で子供たちに浸透していたウイリー・ウイリアムズの再来と言われる、人間離れした風貌は一際目を引きます。大きな目の白い部分が、真っ黒な全身の中で異様に光り、一軒して「近寄りがたい」「修行僧」のようなイメージを植えつけます。
しかし、このテイシェイラ。
「空手バカ一代」に登場する大山倍達氏(アニメ版では飛鳥拳)と同じく、「空手バカ」でありながら同時に非常にクレバーな思考回路を持っているのです。
テイシェイラは、開幕戦直後の抽選会で、レミーと戦うか、ジマーマンと戦うか、それともまだ対戦相手が誰もいない第1試合かを選ぶチャンスを得ました。テイシェイラは、真っ直ぐにジマーマンを相手に選びました。
ジマーマンは、この日の試合で極真ブラジルの「先輩」グラウベ・フェイトーザに圧勝しており、誰もが「武士らしい仇討ち」ではないかとファンは推測したのです。
ところがテイシェイラの語った本当の理由は、そんなことではなく、もっと現実的な理由だったのです。
「空いている枠に入ると、バダ・ハリかアーツと対戦する可能性が高くなる。レミー、ハリ、アーツの誰かと戦うよりも、K-1ルーキーのジマーマンと戦ったほうが勝ちやすい」
戦国時代の剣豪を描いた書、「宮本武蔵」を愛読するテイシェイラですから、「勝つための有利な条件を試合前に極力生み出す」という宮本武蔵の哲学を取り入れているのです。
「勝利至上主義」
テイシェイラの見据える優勝への道のりは、同僚グラウベが敗れたことによって、かえって研究しやすくなったジマーマンをノーダメージ料理し、ヒーロー対決でボロボロになるはずのアーツかハリを倒し、そして決勝戦に挑む。自慢のスタミナで、トーナメントの上に行けばいくほど有利なはずという計算もあることでしょう。
スリナム出身オランダ育ちのエロール・ジマーマンは、何も考えずに下克上を狙うダークホース。8人の中では知名度も最低ライン。逆にプレッシャーゼロ。やりたいことをやれる男。失うものは何もない男。タイトルにも関係ない男。ただ、本能の赴くままに、しなやかな肉体から力技を繰り出せばいいだけ。仕事は蹴ること殴ること。かつて地区予選からスターダムに一夜でのし上がったマーク・ハントにイメージがダブるのです。
言ってみれば、「怪人Ⅱ世」。
開幕戦、入場は2分と言われて3分使った無計画性が、この男の本質に違いありません。
「一緒に入場してくれたラッパーには悪いことをしたよ!」
と、後に一笑。
ジャパニーズドリーム実現へ、すべてを計算づくの空手家か?
ノーマークで決勝戦に残った、目立ちたがり屋で無計画な若造か?
時代が求める哲学は、いずれか一つ。
とりあえず、1週間前だ! 盛り上げとけ! ってなわけで、次回はトルコの雷帝vsロシアの速射砲→人気ブログランキング