【観戦記】K-1 WORLD GP 2008 FINAL 後篇 ~レミーは絶対立たないという確信~
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中篇・・・・・・リザーブマッチ&準決勝http://kakato24.exblog.jp/10295519/

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【観戦記】後編 ~レミーは絶対立たないという確信~


<第9試合 K-1 WORLD GP 2008 決勝 3分3R延長2R>
●バダ・ハリ(モロッコ/ショータイム)
○レミー・ボンヤスキー(オランダ/チーム ボンヤスキー)


決勝戦。
いつものようにレフェリーには角田師御大自ら登場
ココ最近、なにかと疲労の溜まるようなことばかりK-1のリングには起るので、今日ばかりは何も起きないでくれと祈るかのような表情です。
しかし、運命はまたしても正道会館最高師範に試練を与えます。
大会前日、公式HPのルールをいくつも書き換え、MAXで起った出来事が二度と繰り返されないように準備しました。オープンスコアリングをWGPでも採用し、より公平なスポーツとして認知度を高める努力もしました。

谷川EPの表情は、わかりませんでした。しかし、ここまでの興行内容には満足しているのではないかと思われました。彼は2005年以来、20代になったばかりの青年とリスクの高い異例の長期契約を結び、彼のためにヘビー級王座を新設し、オランダのスラムで悪さをしていた悪童をK-1のエースにするために管理・監督してきたのです。

審判部、プロデューサー。すべての準備を無にする行為が、行われました。

ゴング直後から、緊張感のある間合い地獄が始まります。速攻型のバダ・ハリですら、レミー相手には容易に手が出せません。アーツにはあれだけ突っ込んでいった男が、なかなか手足が出せない。これが今のレミーの強さです。
そして、レミーがロープ際の混戦から出した左フックがバダのこめかみを捕らえます。思わず倒れるバダ。追い討ちの右ハイキックが、頭の上を掠めていきました。
ダウン。
再び体育座りでカウントを聞くバダ・ハリがここでキレたことは言うまでもありません。その後は思いにまかせての攻撃、反撃開始。エロジマン戦での大逆転を信じるファンの後押しを受け、バダ・ハリは第2ラウンドに入っても攻勢に試合を進めます。会場も盛り上がっています。

「あいつは気がつえええんだよ!!」

すっかりバダ信者になったダミ声の男も声援を送っています。

もつれ合って、リング中央にバダが上になって倒れたシーン。ここで、信じられない出来事が起ります。倒れたレミーに上からワンツーパンチ。角田レフェリーが制しに入るも、今度は足がレミーの横っ面を捕らえました。倒れこむレミー。バダ・ハリは冷静さを失い、尚も暴れますが、とりあえず角田師が沈めました。
ざわつく会場内。

私は確信がありました。

今日は絶対にレミーは立ち上がらない。試合を続けない。

今日のライブショーはこれで終わり。

続きは来年に持ち越しだ。

事実、レミーは戦おうとしませんでした。ものが二重に見えるといい、恐らく会場の8割がサッカーで言うところの「シミュレーション」だと思っていましたが、行為自体が大問題ですのでバダ・ハリに情状酌量の余地はありません。試合続行ができないとなると、40万ドルが何もせずに手に入るのです。この機会を、プロフェッショナルであるレミーが見逃すはずがありません。

実際にシミュレーションだったかどうかわかりません。
それはレミーしか知らないことなので、論じること自体に意味がないからです。

ここで立ち上がって戦おうとするのは、真性のバトルマニア……例えばピーター・アーツやアーネスト・ホーストのような、戦って相手を倒すことが好きという根本的なファイターです。レミーは天才ですが、天才であるがゆえに、心の底から戦いを求めているわけではない。彼はプロの格闘家であって、バトルマニアではないのです

アーツ、ホーストが若かりし時代のオランダでは、キックボクシングでは稼げませんでした。K-1という舞台もなく、小さな興行が細々と行われている状態。無数の無意味なタイトルを賭けて、ちまちまと小さな暗い会場で試合が行われていました。当然、ファイトマネーもすずめの涙。ファイターは必ず他に本職を持っており、ほとんど趣味・趣向のようなカタチで試合をしていた状況です。例えばホーストは、少年犯罪者を収容する少年院のようなところで、オランダの悪童たちを指導していたと聞いています。第1回K-1GPの王者シカティックは、優勝した当時もクロアチアの軍人でした。

レミーが出てきたころは、すでにK-1という舞台がありました。
彼が石井プロモーターから見込まれ、K-1から契約の誘いを受けたときに、モデルも銀行員も辞めてファイター一本で生活することを決めました
果たして、K-1がなければ、レミーは30代になってもまだ戦っていたのでしょうか?
派手好きで頭の良いこのインテリが、銀行員としての生活を続けるために小規模な客を相手に戦うムエタイ選手としての訓練を続けていたとはあまり思えません。どれだけ強くても、受け入れる「皿」がなければ、続けることはできないと思います。

レミーにとって、K-1のほうが銀行員の生活よりもより輝けると思ったから、より稼げると思ったからその道を選んだのです。銀行員より格闘家。これがレミーの「賢い選択」でした。
従って、K-1がなければ、レミーは戦いを続けていなかったのです。それ以前のファイターはたまたま戦っていたらK-1という舞台が出来た。そこが、レミーとそれ以前の創世期ファイターと根本的に違う部分です。ある種、「趣味が高じた」旧世代ファイターと「元来、仕事として戦っている」レミー以降のファイターとの決定的な落差がここにあります。

「誰とでも戦う」「強い相手ほど燃える」というのが、バトルマニア系選手のコメントです。レミーは「プロ」だから、少しでも上に行くためには「賢い選択が必要」と言います。プロフェッショナル系選手の特徴です。(セーム・シュルトも世代的にはバンナと同年代ですが、精神的にはこっちの選手です)

だから、絶対にあのシーンで立ち上がることはありません
あの場面で最大効率化された行動は、「立たないで勝つ」ことに他ありません。

効いているか、効いていないかなんてことは関係ありません
でも、これが準決勝なら戦う意思を見せたと思います。


ダミ声の男が最後に叫びました。
「バダ・ハリ~、お前を応援するぞ~」
それでいいよ。おっさん。
おそらく、バダ・ハリはこれから格闘技人生最大の処罰を受けるのだから。
ファイトマネーは全額没収。王座も剥奪が濃厚。試合もしばらく出られないかもしれない。
したり顔の「アンチ」が、ここぞとばかりに攻撃してくるでしょう。
そんな時、リングに立つことを待つ者がどこかにいなければ、ファイターバダ・ハリは死んでしまうのです。
ジェロムが「日本のファンは俺がどんな風になっても見捨てない。彼らのために戦う」といつも言う。
バダにも言わせてやればいいんじゃないですか?
僕たちはキミを裏切らない。だから、キミは二度とボクタチヲウラギルナ……と。
言いすぎかな?

さて、最終回の結末を残り10分の放送事故で永遠に失ってしまったかのような、そんな「残尿感」のようなものを味わった私は、帰路につきつつ、それでも来年以降にものすごく希望を見出したような印象を持ちました。

レミーとバダ・ハリが決勝戦の舞台に立った瞬間、これまで「近未来」のK-1だと思っていた風景がそこにあったからです。とりあえず、それで満足することにしましょう。今回は。

バダ・ハリへの処分は気がかりでしたが、そんなことは私が考えるまでもなく、かわいそうにおそらく今ごろネット上で槍玉に上げられているであろう谷川EPと角田師範におまかせしましょう。
興行への誹謗中傷罵詈雑言をネット上で読むのはめんどくさいので、2、3日他人のブログは読まないことにしようと思いつつ、本日止めてもらえる親戚の家に行きました。


そこで、急性胃腸炎を発病し、一晩吐き続けました
その間、ずっと頭の中でぐるぐる回っていたのは、第2試合の前に流れた紹介VTRでジマーマンが「Call me! エロ…ジ・・・マン! ヒャハハハハハ!」とふざけている映像でした。理由は不明です。無性に腹が立ちました。

いろんな意味で、思い出に残るK-1FINAL観戦となりました。



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by the_kakato_otoshi | 2008-12-09 12:22 | K-1

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