オランダ・Showtimeから見えてくるもの
先日試合順をお伝えしたオランダのK-1ルール興行「It's Showtime」。

バダ・ハリvsシュルトという超ビッグカードで注目を集めるオランダのプロモーションですが、ぽっと出た興行ではなく細々とながら歴史は長いです。それが、オランダ人スターを多く抱えるK-1WGPと共同でイベントを行うことによって、いきなり2万人収容できるアムステルダムアリーナを満員にする興行を実現させました。

今回、ショータイム単独興行で勝負に出たことに、私はこれまで余計な事をしやがってと罵倒してきたクチですが、決して全面的に否定しているわけではありません。
積極的にK-1に及ぼすプラスの面もあると思っています。

セーム・シュルトへ安いファイトマネーでオファーし、それをしぶしぶシュルトが受けたことについては、意味があると思います。

K-1は昨年アーツに敗れてから、日本での人気が出ない3連覇王者に総合のオファーをかけました。
ダイナマイトでのマイティ・モー戦もそうですし、鳴り物入りで始まったものの人気が低迷して選手も離れ、存続問題が囁かれるDREAMのモンスターGP(スーパーハルクトーナメント)に出場をオファーしていたのは公然の秘密(?)です。
FEG=フジテレビのこの一連の「冷遇」ともいえる待遇は、日本でシュルトの立ち技に需要が見込まれないと思っての行動……でしょう。

しかし、需要と供給を常に重視する現在の日本側の格闘技運営を、「現在の」オランダのファンは概して理解できないことでしょう。
オランダのK-1熱は年々高まり、ついには単独開催をできるまで力をつけたわけですが、オランダ人がK-1に求めるものは競技性とエンターテイメント性の融合です。K-1のルールが、これまでのムエタイやキックボクシングのような既存のアンダーグラウンドな格闘技ではなく、ファッショナブルでテレビ映えすることに気がついてきたのでしょう。

オランダ人にとっては新鮮で、興味深いものに映っているため、今は何をやってもウケる時代なのです。これは日本でK-1が始まった時期と同様でしょう。
日本でもそうでしたが、この時代は「誰が一番強いのか?」に注目が集中します。ゆえに、オランダ人にとってはセーム・シュルトの立ち技には商品価値があるのです。

多分、今のオランダはかつての日本の格闘ブーム時のように、選手個人のキャラクターやエンターテイメント性を必要としていない時期なのでしょう。今後数年経つごとにどうなっていくのかは全くわかりませんが、今はトップファイター同士の真剣勝負・序列決定戦が一番面白い時期なのです。

ゆえに、ショータイムが組むカードも自然と序列決定戦的、日本的に言うと「ガチ」色が強いものになります。
日本ではそうした「ガチ」色が強いものはブーム時に消費されつくしていますから、インパクトを求めてどうしても「レミーvsアリスター」とか、「ホンマンvsバダ・ハリ」のような予想もつかないような「ぶっ飛んだ」カードが組まれることになります。他の競技ですが、MMAの「スーパーハルクT」はその極地にあるようなものです(出場選手自体は消費されつくした選手が多いので、企画ありき・・・なんですけどね)。それを別に否定する気はないんですけど、まだガチカードが消費されつくしていないオランダではこういうものは組まれないでしょう。

そういった、選手の価値基準、商品価値が、これまでは日本市場でのみ計られていた。これが、オランダという新たな市場の成長で、単なる「日本でウケるカード」だけ組んでいればいい時代ではなくなったことを、端的に証明しているのが今回の「ショータイム」なのです。
そして、逆にこの「ガチ」オンパレードが、日本のファンに対して「そういえば以前はそんな感じだったかも」というデジャヴを起こさせているのでしょう。その象徴たるシュルトvsハリは、そんな90年代のワンマッチ興行(王者クラスと勢いのある実力派選手をガツガツぶつける興行)を思い起こさせる非常に「K-1的」な興行なのかもしれません。
もちろん、90年代を知らない新しいファンはこの序列決定戦的なカードの数々は新鮮に映るに違いありません。
このような大会が出来る興行があるということは、K-1=FEGにプレッシャーをかけることになります。
これまでは立ち技の独占企業で、やりたい企画が比較的自由に出来た時代は終わり、WGPの本流をないがしろにして、「K-1版スーパーハルクT」のようなものを優先することがあれば、たちまち勢力図や歴史的価値観が変化することでしょう。もちろん、K-1に不利な方向に。そういう受け皿ができてきていることは事実として認めましょう。
どこまでサイモン・ルッツとショータイムが今のモチベーションを維持できるかという問題はありますけどね。
それはまた別の機会に考えましょう。


ところで、このメインイベント。選手の立場からはどのように考えられるでしょうか?

セーム・シュルトがバダ・ハリに勝てば、K-1はシュルトを立ち技で無視することは不可能になります。だからシュルトはハリ戦を受けたのでしょう。「ギャラは安いが、将来への投資と思って我慢」というのは、シュルトの偽らざる戦略に他なりません。ハリを倒した男をトーナメントに出さないのであれば、世界最強決定の看板を外さなくてはならないからです。
K-1運営陣に対して、これ以上の圧力はないでしょう。
逆に、バダ・ハリとしては、仮にここでシュルトを倒せるようであれば、K-1が「シュルトをグランプリでスルー」=「自分がグランプリを優勝する確率が広がる」という計算は当然織り込み済みではないでしょうか。
負けたとしても、もともと相手は格上、価値は下がらないと思っているに違いありません。

ゆえに、この試合は両者にとって意義のあるマッチメイクであると断言できます。
ギャラを度外視して出場したくなるほどに。
ただ、リスクはシュルトのほうが若干重いですかね。


勢いのある「It's Showtime」史上最大の作戦を5月16日、見守りたいと思います。

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by the_kakato_otoshi | 2009-05-13 17:27 | 立ち技全般

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