凄まじい勝ち方をお互いKOで決めた両雄の初対決は見逃せません。
<スーパードクターP ジョルジオ・ペトロシアン 23歳 アルメニア出身イタリア国籍>
近5戦成績
○ vs W・スティーブルマンズ 判定
○ vs D・シャバキア 1RKO
○ vs A・サワー 延長判定
○ vs D・チンギスハン・アスケロフ 3RKO
○ vs F・シャバリ 判定
「優勝候補はペトロシアンかキシェンコ」とは、谷川氏の弁。同じく年内引退を表明している魔裟斗の予想。
今年初めてK-1に登場した選手に対して、異例とも思える高評価です。
魔裟斗ですら高く評価しているものの、彼が例えばYOUTUBEなどで逐次ペトロシアンを追っかけているとも思えず、Final16におけるアスケロフ戦でその評価を固めたと思われます。
それほどの衝撃。お茶の間に伝わったのはわずかに5分程度でしたが、その流体を思わせるしなやかで伸びのある動きと、無駄のない攻守でアスケロフを完全に翻弄し、ジャブのように放つ膝蹴りをボディに突き刺して相手を眠らせてしまった試合は、「戦慄」という言葉がピッタリでしょう。
ペトロシアンは福岡大会後「実力をすべて出し切る必要はなかった」とアスケロフを評し、格の違いを強調。まさに、大いなる新人。
一気に次戦は初代王者で会場人気の高いA・クラウスとなりました。
このイタリア人の凄いところは、まずK-1実績のある大手ジムには所属していないところです。ゴールデングローリーやチーム・アーツ、マイクスジムなど、オランダ系のK-1と親交厚いチームはいわばK-1へのスターシステムを確立しており、デビューも比較的容易です。
ペトロシアンはK-1発展途上国のイタリアを本拠地とし、大手ジムの後ろ盾もなく、実績のみで評判を積み上げてきました。オランダ人であれば、すでにMAX開幕戦出場していてもおかしくないような抜群の戦績です。2009年、ようやくにしてFEGの目に止まり、イタリアを本拠地にしているファイターとしてはおそらく初めてとなるFianl16に出場したのです。
非オランダ系であるがゆえに、いわゆる「K-1らしい」オランダ的な戦い方とはフォームからしてちょっと違うなと思わされます。こういう「異分子」を受け入れる土壌として、日本のファンは成熟しています。ペトロシアンが日本で一つのムーヴメントになるために必要なのは、MAXという70キロ世界最強の頂だけなのです。
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<リングのパパはいい汗かいてる男だぜ アルバート・クラウス 28歳 オランダ出身>
近5戦成績
○ vs 城戸康裕 2RKO
○ vs ブアカーオ 判定
○ vs W・スティーブルマンズ 判定
○ vs イ・スファン 判定
○ vs 長島☆自演乙☆雄一郎 1RKO
初対決。当然、それは一度しか観ることができないものです。
魔裟斗がクラウスに倒された2002年第1回K-1MAX世界王者決定トーナメントの準決勝こそ、MAXの歴史が始まった瞬間でした。この敗戦から、魔裟斗は打倒クラウスを目標に頑張っていましたから。
以来、MAXでの登場数は魔裟斗を超しています。日本国内での「ミスターMAX」が魔裟斗であるならば、オランダにおける「ミスターMAX」はこのクラウスです。
クラウスは初代王者になった後、有頂天になってジムとも決別し、そこから低迷しました。
しかし、ここ数年のクラウスは完全復活と言ってもいい「第2の全盛期」を迎えています。
負けらしい負けは2007年のディレッキー戦まで遡らなければならず、ここ数戦でも、ブアカーオ、スティーブルマンズなどトップファイターを下しています。圧巻だったのが、Final16の自演乙戦で、格下相手でも全く手抜かりなく、2月のイ・スファン戦でノソノソ試合をしていたのが嘘のようなキレキレの動きを披露。すでにパンチが綺麗に入ってダウン寸前の相手に、「高速5連速射砲」で止めを刺しました。
注目されていた自演乙選手が9時またぎで登場し、高視聴率を叩き出しましたが、そんなコスプレヒーローにチャンネルを合わせた日本国民に、「K-1の現実」を圧倒的な実力差で示したのが、この初代王者なのです。
「打ち合ってくれるの?」とは魔裟斗が川尻に言い放った言葉ですが、
最近K-1では「打ち合い」が奨励される傾向にあります。クラウスはその意味で最も「ナチュラル」なK-1に求められている戦い方をする選手の一人と言えるでしょう。ただ、相手の実力次第では「打ち合い」にもならない結果となります。
今年の目標はただ一つ、「王者奪還」と明言しています。
実のところ、クラウスはベスト4で当たるのがドラゴもしくは山本優弥である枠に入るために、難敵ペトロシアンを自ら選びました。優勝するからには一日2試合戦う準決勝の相手が最も重要だと理解しているのでしょう。
ブアカーオもサワーもキシェンコもいないブロックですから、相手はまさにFinal8のイタリア人のみ。という気持ちなのかもしれません。いや、そもそもペトロシアンを大した相手とも思っていないのかもしれません。強い強いと言われても所詮はMAX2戦目の「ルーキー」。自信家のクラウスのことですから、自分とは格が違うと思っているのでしょうか。
魔裟斗vs川尻、KIDなど今回注目される選手が決して見せることのできない、キックボクシングの超一流同士の成りあがり本気マッチ。手に汗握るガチガチの初対決を目の当たりにできるのが、ここ日本であることが素晴らしいと思える、歴代のMAXでも屈指の珠玉カードです。K-1ファンのみならず、キックボクシングのコアファンは垂涎では?
そのぶん、勝敗の行方を予想するのは、マリアナ海溝の底に眠る黄金の鍵を探すに等しい、難しいものでしょう。
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