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”史上最強”ペトロシアンはアルメニア出身のイタリア移民
<ジョルジオ・ペトロシアン>

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第8代K-1MAX王者ジョルジオ・ペトロシアン。

にして、史上最強とも言われた今回のパフォーマンスは観る者を圧倒しました。

昨年の王者魔裟斗は、2試合とも地元判定ともとれる僅差の勝負で(延長戦は勝っていたけれども)、
いろいろと物議を醸したことは記憶に新しいところです。

しかし、ペトロシアンは、彼の試合に関しては一切の疑問の余地がありません。

アンディ・サワーvsブアカーオ、HIROYAvs日下部などで、ジャッジングの問題が。クラウスvs武田幸三、自演乙vsシュー・イェンではレフェリングの問題が取りざたされましたが、
王者ペトロシアンに関しては、誰一人として異論を挟む者はいませんでした。彼の前では、他の選手の試合はすべてアンダーカードと化してしまうことでしょう。

今後は、今や”K-1の本場”となった欧州でも爆発的に知名度が広がっていくことでしょう。

ジョルジオ・ペトロシアンを通じて、イタリアそして、出身国のアルメニアなどに興味を持った私は、彼の軌跡とともにちょっと調べてみることにしました。

<基礎データ>

ゲボルグ・ペトロシアン、イタリア名:ジョルジオ・ペトロシアン。
身長178センチ。体重70キロ。1985年12月10日生まれ、23歳。
サトリ・グラディエートリウム・ネメシス所属。戦績・63戦60勝1敗2分

ちなみに、一敗はブアカーオの弟分でK-1にも参加したことがあるノンタナン・ポー.プラムック。ノンタナンは一度だけK-1OPファイトに登場し、ファリッド・ヴィヨムに判定負けしています(2007年)。

ペトロシアンvsノンタナンの試合はタイのルンピニー・スタジアムで行われ、5ラウンドでノンタナンが判定勝利したとのことです。映像などはないようです。

<道のりを辿る>

出身は、ドラゴと同じアルメニア。
首都エレバンに生を受けました。

エレバンは、人口100万人ほどの大きな街です。

ドラゴは内戦で兄を失うなど、命からがら逃れてきたという印象がありますが、
ペトロシアン一家がイタリアに移住してきたのは2000年です。すでに戦争は終わっています。ナゴルノ・カラバフ戦争は20年前ですからね。

ナゴルノ・カラバフ戦争は、ドラゴが難民としてオランダに流出するきっかけになった戦争で、この戦争が起こった当時、ペトロシアンは3歳ということになります。
エレバンに住んでいたアゼルバイジャン人がほとんど追放されていなくなったというほど壮絶な争いでしたが、3歳では覚えていないかもしれないですね。

ペトロシアン一家の移住原因はわかりませんが、2000年前後のアルメニアは深刻な経済危機の状況でした。
この頃、多くの移民がEC圏内に流出し、エレバン市の人口がかなり減ったそうです。先進国であるイタリアに移民したペトロシアンも、同様の理由だったのかもしれませんね。

正直、こういう話を聞くと、今の日本の経済状況が悪いといっても、
人々は平和で餓死も移民もせずに生きていられるんですから、日本人はまだまだヌルいこと言ってるな、という気持ちになります。

さて、イタリアに移住してすぐにムエタイをはじめたペトロシアンがデビューしたのは、2002年。16歳のとき。

そういえば、アンディ・サワーも16歳からプロでやっていましたので、やはり一流の選手は早熟なのだなと思います。

<イタリア移民として>

一口に「イタリア」と言っても、広いです。
ペトロシアンが移住したのは、「ゴリツィア」という街でした。

ゴリツィアは、イタリアと東の隣国スロヴェニアの国境線にあります。なんと、ゴリツィアは第2次世界大戦において、街を半分にされたまま国境線が確定してしまったのです。

イタリア側はゴリツィア、そして、スロヴェニア(旧ユーゴスラヴィア)側はノヴァ・ゴリツィア(新しいゴリツィア)として、双子の都市になりました。

まるで、冷戦下のベルリンのよう。。。と思うかもしれません。

しかし、両者の関係は決して悪いものではなく、
もともと歴史的に数多くの人種が混在している土地だったため、いざこざの類は起きていないようです。

他民族に対して寛容な精神を持つゴリツィアですから、移民もしやすかったのかもしれません。

では、、、、

それで平和なのか?

といえば、実はイタリアという国で見るとそうでもないようです。

http://www.news.janjan.jp/world/0810/0810260197/1.php
「移民差別:子供達の間にも境界線(移民の子供のクラス分け)」

http://www.news.janjan.jp/world/0808/0808053839/1.php
「イタリア:東欧圏からの移民に厳しい治安対策を実施」

これらの記事を読むと、増え続ける移民とイタリア国民の軋轢は拡大しています。
他にも、移民や不法労働者の問題はイタリアの頭痛の種であり、差別が横行しているとのことです。

<スタイルの由来>

決してイタリアに来たからといって、移民はハッピーになれるわけではない。

移民というマイノリティとして負い目は皆無ではないでしょう。

勝たねばならない。
ペトロシアンが淡々とディフェンスとカウンターで勝利を重ねてきたのは、そういうわけがあるのでしょうか。欧州では、結果がすべてですから、とにかく勝つことを最優先した結果、彼のスタイルは確立された・・・と、推測できますね。

「負けてもいいから、沸かせる」「男を見せる」なんていうつまらない、安っぽいメンタリティーではないから、彼の戦いには説得力があるのでしょう。

さて、「超絶技巧」などと呼ばれる(フランツ・リストか?)ペトロシアンですが、
彼のジム「サトリ・グラディエイトリウム・ネメシス」について調べてみましょうか。
(ちなみに、ジム名の「サトリ」は、日本語の「悟り」が語源だそうです)

ジム創設者Alfio Romanut氏について、ジムの公式HPではこのように紹介しています。

「元々空手やキックボクシングをやっていたが、1985年にオランダでムエタイに出会う。1992年に習い始める。1997年にタイにいき、イタリアではマルコ・デ・チェザリスに学ぶ。ジムを開設し、独自の理論を開発。プロやアマチュアの舞台で教え子が数々のタイトルを獲得している」

と、こんな感じです。

つまり、空手・キックボクシング・ムエタイを経験したAlfio Romanutが、それらをミックスして、独自のムエタイを開発し、それを弟子に伝授している・・・・そういうことなのです。

ペトロシアンが会見で「僕のスタイルは独特なんだ」と言っているのは、師匠のスタイルのことを指しているのでしょう。

同ジムには、弟のアルメン・ペトロシアンも在籍しています。こちらもかなりの勝率を誇る強豪。いずれは兄弟でK-1に登場することもあるかもしれませんね。

K-1ルールが広まり、研究されて技術が画一化されているオランダの選手とは違うリズム、価値感で戦うジョルジオ・ペトロシアン。先進国由来のショー格闘技に毒されきっていない23歳の青年の放つ存在感は、日本やオランダ、アメリカの選手とは違う何かを持っています。

<大晦日、是非怪我を直して・・・・>

日本人が日本に暮らしている以上、
黙っていても、生きていくことはできます。
しかし、故郷を遠く離れなくてはならないような環境、黙って生きていることができないような環境を知っている選手は、そのオーラというのがまるで違う。そんな気がします。

3000万円という、おそらくこれまで握ったことがないであろう賞金を手にしたペトロシアン。そして、それ以上に欧州で爆発的に広がる人気スポーツになりつつあるK-1の王者というステータス。
イタリアの片田舎で暮らす青年が、これからどのように変質していくのか、
ジャパニーズドリームを掴んだ「精密機械」の今後の、彼の人間的な成長(もしくは堕落)には注目していきたいと思います。

魔裟斗がその強さを目の当たりにし、
「一番強い奴とやりたい」と、リングに上がってその場で挑戦を表明しました。
テレビで気になったのは、やけにあっさり「いいよ」とペトロシアンが答えたことでしたが、
その後のFEGのインタビューでは、

ジョークだと思ってた。だって、僕と戦いたいって、ジョークとしか思えないだろ?」

と、超とぼけたのコメント。

負ける気ひとつもなし(笑)。

王者が骨折したことで、
対戦相手がサワーとか、佐藤嘉洋とか、言われています。

しかし、私は断然ペトロシアンvs魔裟斗が観たい。

格とメンタリティの違いをMAXで魔裟斗が一番強いと誤解している日本国民に見せ付けてほしいと思っています。
それができるだけの力量があると思うからです。

そして、MAXを、再び魔裟斗個人ではなく、選手の手に取り戻して欲しいではありませんか。それでこそ、彼も安心して引退できるものだと思います。

もちろん、自身の引退試合で無様に負ける姿を晒したくはない、魔裟斗の意地の作戦も見たいです。

そんなことを考えると、
サワーvs魔裟斗、佐藤vs魔裟斗の再戦よりも、よほどアメージングなワクワク感があります。

ともすれば、大衆迎合に走るイベント屋やテレビ局の思惑もなにもかも、すべてその「超絶技巧」で打ち砕く様子を見て、年越しそばを啜りたいです。そのようにして紡がれてきたのが、K-1の歴史・・・・でもありますしね。

破壊の後に、建設が始まる。価値感をひっくり返した先に、進化がある。





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by the_kakato_otoshi | 2009-10-30 12:36 | K-1

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