史上最高のファイナル・K-1WGPアリーナ観戦記 ~2~
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史上最高のファイナル・K-1WGPアリーナ観戦記 ~2~


▼第3試合 トーナメント準々決勝 3分3R延長1R
○アリスター・オーフレイム(オランダ/ゴールデン・グローリー/初代ストライクフォース世界ヘビー級王者)
●エヴェルトン・テイシェイラ(ブラジル/極真会館/第9回全世界空手道選手権優勝)
KO 1R1分6秒 ※左ヒザ蹴り


筋肉がとぐろを巻いて立っているとしか思えないアリスター・オーフレイムの姿にどよめく会場。DREAMのファンには見慣れた光景でも、K-1ファンの前に、しかも日本のファンの前に彼が姿を現すのは、3月のレミー・ボンヤスキー戦以来となります。

K-1史上最強の外敵」としてバダに挑戦状をたたきつけたダッチサイクロンの対戦相手は、こちらも外様。極真の栄光を背負う男、エヴェルトン・テイシェイラです。

両怪物が立ち並んだ時の迫力たるや! かたや筋肉の鎧で固めたアリスターと、非科学的なトレーニングで負けない身体を作った極真の英雄。うーん。凄い

試合展開は静かな始まり。アリスターの突進を警戒するかのように、空手流の構えで距離を探るテイシェイラ。ローキックに活路を見出そうとするテイシェイラでしたが、ハイキックを振りぬいた後、間合いを見てアリスターに距離を詰められる。ここで、アリスターはテンカオ(膝蹴り)! 中段に入ったところを、抱え込まれて上段に打ち込まれる。これがクリーンヒットし、テイシェイラはダウン!

ダウン……?

いや、全く動かない。完全に失神。だいじょぶか?

試合開始、1分強。ゴングが打ち鳴らされ、石井館長はじめ、多くの関係者が気絶したテイシェイラの元に駆け寄る。。。。

ざわ……

歓声というよりも、戦慄がアリーナを包み込む。無傷。全くの無傷ノーダメージで、K-1史上最強の外敵が、K-1を背負う男にまで成長したゴールデンボーイに挑むことが決定したのです。

これから何が起こるんだという不安と、バダですらこの大渦は止められないだろうという諦めのミックスジュースが、アリーナの客席をローリングし、ビチャビチャにしていました。
大会前、アリスターはテイシェイラ戦で消耗するという予想もあったくらいですが、終わってみればこの結果。

「これは、アリスターの決勝進出は十分ある……」

私も、やはりこの時点ではそのように思いました。もはや、バダ・ハリやアーツを倒したことをフロックだという人間はいないでしょう。
昨年のダイナマイト終了後、私はブログで「新しいK-1ファイターの登場」と書きましたが、まさかここまでグランプリで通用する選手になるとは思いませんでした。いや、仮に2008年末の試合がアップセットだったとしても、K-1がレミーやアーツをぶつけたことで、急速にアリスターが上達したことも事実だと思います。

ダッチサイクロンの衝撃は、2002年のボブ・サップを思い起こさせるに十分でした。しかも、アリスターはK-1がブームになっているオランダ在住で、格闘家としての経験も長くあり、ムエタイやキックボクシングをやっていた選手なのですから。立ち技に対応できる裏づけもあります。

あのとき、ホーストはサップに2度目も敗れました。バダ・ハリは? 彼もまた外敵に二度敗れるのでしょうか? もはや、ダッチサイクロンの暴風を止める術はない。そんな不穏な空気が、グランプリを支配しはじめました。

話はかわって、エヴェルトン・テイシェイラ

彼がK-1でKO負けを喫するのはこれが初めてです。
戦績は良いのですが、対戦相手に恵まれている印象は拭えません。開幕戦でジャディブにほとんど負けの試合をし、私の中ではベスト8の中では戦えないのではという疑念がありました。

極真世界王者という肩書きだけで通用するわけではないのですからね。テイシェイラがアリスターに勝てるとはまるで考えられませんでしたが、打たれ強いので、粘るとは思っていました。しかしながら、この結果。
格下や身体の小さな相手とばかり戦ってきて、大きな選手との戦いがなかったツケがついに回ってきたのでしょうね。アリスターが格上と戦って経験を積んだのに対し、テイシェイラは格下や日本人選手とばかりでした。その差は大きいのでしょう。

もっとレベルの高い相手と戦って、勝ち負けを繰り返さないと、才能は開花しないのではないかと思います。


▼第4試合 トーナメント準々決勝 3分3R延長1R
○セーム・シュルト(オランダ/正道会館/K-1 WORLD GP 2005~2007優勝)
●ジェロム・レ・バンナ(フランス/Le Banner X treem Team/K-1 WORLD GP 1995&2002準優勝)
KO 1R1分27秒 ※左前蹴り


歓声が落胆の声に変るまで、1分半を必要としませんでした。いつもの「カルミナ・ブラーナ」で登場した最後のレジェンドは、シュルトのミドルキック一撃で肩膝をつき、再開後にも前蹴りをボディにもらい、もうゴング。

テレビで確認したときに藤原ノリカ姉さんが「これで終わりだと思いたくない」とおっしゃってましたが、私としては「もうそろそろ終わりにしてあげて欲しい」という印象でした。

シュルトはすぐにリングを降りて、次の試合に備えるという風です。

バンナは、試合前から、いやもう去年から、まるで気合というものをフランスのブルゴーニュの田園風景のどこかに置いてきてしまったようです。リザーブにも関わらず優勝するつもりでリングに上がっているもう一人のレジェンドと比べて、なぜこんなに差があるのかと思いました。
バンナのことはファンですし、ずっと彼のファイトで胸を焦がしてきた者として、これほど哀しいことはない。

約束したはずのハーリック会長のトレーニングも受けず、なぜかカナダで練習し、契約上出席することになっているプレスカンファレンスも出場せず、試合翌日のファンクラブイベントも出ない。KOされたテイシェイラすらいたのに。

それはいい。しかし、なによりも、負けても悔しがっているように見えない。これはどっかで見たことあるぞ。ああ、サップだ。最近の!

36歳。これはセーム・シュルトと同じ年齢です。シュルトが年々アグレッシブに変化しているのに対し、バンナはもう気持ちが切れているように感じます。怪我もあるかと思いますが、何よりバンナを支えた闘志が残高ゼロのようです。

いままで本当にありがとうございました。と。シュルトやバダのような化け物が棲むトーナメントではなく、自分の力が発揮できる相手と、ワンマッチで戦うようにしてもらえないでしょうかね。勝ち負け以外の価値観を魅せることができるバンナであれば、そういう道もあるんじゃないかと。

これだったら、ハーリック会長が望むように辞退してもらって……「ピーターが出たほうがずっとよかった」。
そんな声が別の客席から聞こえてきました。

シュルトは予定通りの楽勝で、ほくそ笑んでいたことでしょう。
レミーやシュルトも最近年齢が上がってきて、引退のことを聞かれるときに、「負けが混むようになってから引退はしたくない」と発言しています。まさに、この日のバンナのようにはなりたくないということでしょうね。


▼第5試合 トーナメント準々決勝 3分3R延長1R
○レミー・ボンヤスキー(オランダ/チーム ボンヤスキー/K-1 WORLD GP 2003&2004&2008優勝)
●エロール・ジマーマン(キュラソー島/ゴールデングローリー/K-1 ヨーロッパGP 2008優勝)
判定3-0 ※30-27、30-28、29-28


レミー・ボンヤスキーという選手は非常に不思議で、均整が取れているけど、特に強そうな体にも見えず腕はヘビー級のパワーファイターに比べれば細く、ボクシングテクニックもあまりあるように見えない。しかし、試合になるとパンチでよくダウンを奪う。

勢いや体格で押し込まれても、たった一発の軽いパンチ、キックでダウンを奪い、逆転する
と、亀ガードでガッチリ守っているかと思ったら、ここぞというシーンで派手に飛び、相手を霍乱する。

レミー・ボンヤスキーはディフェンシブなファイターであるという間違った認識を持っているファンもいるようですが、彼の本質はそういう部分ではなく、攻めるとき、守るとき、当てる場所、勝ち方を常に用意し、そのプランに応じて確実に勝つ。非常に高いレベルで、ディフェンシブが求められるとき、アグレッシブに攻めるときの緩急、リズムを持っている。そういう天才的なキックボクサーなのだと考えています。

なんといっても、3月のアリスター戦。膝を手術しなくてはならないほどの怪我を負っていながら、メインイベントに登場した前年度王者は、圧倒的な体格とパワーの前に踏ん張れない左足で苦しみながら、なんとたった一発、顔面への右ストレートだけで勝利を奪いました。
帳尻を合わせただけの試合でしたが、勝ちは勝ち。9月のマヌーフ戦も、90キロ程度の小さな相手に打ち込まれましたが、前半のリードを守りきって勝利。

この日も、若いジマーマンの荒っぽいファイトに押されましたが、1Rにカウンターで合わせた右クロスでダウンを奪い、後は右のミドルやロー、どれだけラッシュを受けても最後に必ずパンチを出して負けているように見せない印象点操作で、逃げ切り。私はレミーが今年膝の手術を受けて入院しており、決してそれが完治していないことをわかっていましたから、ヒヤヒヤして観てました。それでも、1回のダウンでなんとか勝ちきりました。

今の左足のコンディションでは、限界のパフォーマンスだったんじゃないでしょうか。でも、勝っちゃうのがレミー・ボンヤスキー。もっと評価されてしかるべき。

左のキックはほとんど打てず、リングを降りるときも足を引きずって歩いていましたからね。
これはジマーマンの繰上げ準決勝かと、この時点では考えていましたが……。

エロジマンは相変わらずナイスファイトでした。
オランダのIt’s Showtimeや他の地元興行に出場する時と、K-1で試合をするときとでは全然ファイトスタイルが違いますね。

頑張るときと頑張らないときの差が激しい選手で、アーツに「ジマーマンは才能はあるが、怠け癖がある」と苦言を呈されていましたが、日本に来るときは「全開ヴァージョン」を見せてくれます。ハイキックや飛び膝の威力は物凄いものがありますね。まだ23歳。バダより若いので、これからが期待です!


▼第6試合 リザーブファイト2 3分3R延長1R
○ダニエル・ギタ(ルーマニア/Kamakura)
●セルゲイ・ハリトーノフ(ロシア/ゴールデングローリーロシア)
KO 3R36秒 ※右ローキック


ゴールデングローリーに加入した2007年以降、ずっとK-1参戦の機会を伺っていたセルゲイ・ハリトーノフがついに登場です。
PRIDE時代は、東欧人らしいアグレッシブファイトで客を沸かせたハリトーノフですが、最近はその強さも鳴りを潜めていました。しかし、心機一転K-1で盛り返して欲しいとも思っていました。

ダニエル・ギタはアンディ・フグ以来の「武士道」の匂いを漂わせる外国人選手で、丁度28歳と油の乗っている年齢。カラーリングの薄い瞳の色、濃い髭、年齢の割に落ち着いた所作は、すでに日本では絶滅危惧種である「武に生きる漢」の色気を醸しだしています。

いずれも魅力的なファイターであり、この対戦がリザーブマッチ2で拝見できるとなるとは思いませんでした。昨年のリザーブマッチにレイ・セフォーvsチェ・ホンマンというカードがありましたが、あれは12分間退屈を通り越してトイレに立つ者が続出する展開でした。
今年は二人とも出場していない。これはもう仕方ないでしょう。

試合は、予想通りギタのローキックがズビシズビシと鳴り響く。ハリトーノフはパンチ、特にフックとアッパーでルーマニア人のガードの上を叩きますが、あまり効いている様子もありません。

1R、2Rとずっとギタが顔面へのガードを固め、ローを蹴り続けます
ハリトーノフが顔面へのパンチでしか攻撃をしないからです。何度かギタのガードをくぐって、顎にアッパーを命中させた死神落下傘ですが、焼け石に水。ハリトーノフの顔が苦痛に歪む様は、なかなかお目にかかれない光景でした。しかし、なかなか倒れない。どれだけ鉞のようなローを食らっても、心が折れない現役軍人の姿に、会場はどよめきました。

3R。ついに左足が悲鳴をあげ、ハリトーノフはリング上で大の字になって倒れました。ノックアウト。ダニエル・ギタが勝ち名乗りを受けますが、ハリトーノフの異常な持ちこたえぶりが印象に残る試合でした。ルーマニアの英雄は、この試合は「負けないこと」に徹した印象です。リザーブファイトとしてはこれでいいのだと思います。「まさか」の時のための、可能性を繋げるためにも。
レベル的にベスト8のジェロム・レ・バンナとテイシェイラより上だったでしょう。トーナメントの面子が、この二人ではなくギタとアーツだったらなぁ……。というのは、あまり言わないことにしますか。

むむ、次はいよいよ、バッドボーイvs筋肉デビルですか。

いずれが勝っても、悪が栄えるのじゃ~。ふしゃしゃしゃ(謎)。



続く!


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by the_kakato_otoshi | 2009-12-08 14:20 | K-1

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