【シリーズ】K-1モンスター路線とは何か ~3~
~モンスター路線の功罪~

 ~2~では、モンスター路線の成立と、その仕掛けについて解き明かしていきました。

 「モンスター路線」というものはサップによってきっかけが生まれ、それをテレビ局が増幅させたのです。その流れにFEGも乗りました。というか、乗らざるおえませんでした。時代は「柔よく剛を制す」から、「剛よく柔を制す」時代に移りかわったのです。同時にサップを意識したマイクパフォーマンスや記者会見での因縁作りなどで、マスを意識した興行作りを始めました。これもサップの影響です。

 2004年でほぼサップ時代は終焉(優勝したのはレミーなのでレミー時代と言えなくもないけど)。2005年K-1は「原点回帰」を掲げました。ボビー・オロゴンを出撃させた2004年ダイナマイトにおける「素人参戦」「モンスター路線」は相変わらず数字(視聴率)は取れていましたが、ファンの評判はすこぶる悪く、同時に主力選手の不調や引き抜きなどによって、2004年の決勝グランプリは非常にレベルが低下してしまいました。正統派のキックボクサーであるレミー・ボンヤスキーの2連覇によりK-1の面目は保たれましたが、ホームタウンディシジョンで常に戦術上の優位を得ていた武蔵が仮に優勝していれば……と考えるとぞっとします。
この時期、K-1からミルコを引き抜いて人気をもぎ取ったPRIDEの台頭で、選手のファイトマネーは高騰せざるおえず、多数の選手を抱えるK-1にとっても頭の痛い問題となりました。
 しかし、K-1はしたたかでした。若い選手発掘のために世界中での予選を行っており、またTBSで放送している70キロ階級の成功などもあり、危機的状況には陥りませんでした。

 テレビで成功したK-1ですが、この年はテレビに苦しめられます。
 実態はふざけた連中が興行を行っていたものの、ストイックさを前面に押し出した演出で人気を博したPRIDEにファンが流れました。同じ「格闘技」コンテンツを持つことになったフジはPRIDEとK-1で作り方をすみ分けようとします。
 K-1は全年齢仕様に、PRIDEは若年仕様にしました。これに苦しめられたといえるでしょう。 全年齢仕様のK-1では、すでに終わった選手であるサップを使い続けましたし、動くことすらままならない曙を出しまくりました。出すだけでなく、主役として扱いました。谷川氏も「横綱の潜在能力に期待したい」とお茶を濁すばかり。K-1は「モンスター路線」で稼いだ金で世界予選を行い、新しい選手を発掘しますが、サップショックのインパクトは強く、彼らが無残な敗戦を重ねてもフジテレビやTBSは出場させ続けました。何の区別もつかないおじいちゃんやおばあちゃん、そして子供でも知っている人物だからです。K-1変質したと世間に見られても仕方がありません。
 谷川氏は幾度となく、テレビ局へ暗にメッセージを送り始めたのもこのころです。「もう原点回帰しかないとか、もう曙は出さない」と言いました。しかし、数字=スポンサー料に勝るものはないのです。一方で高騰しきったマネーゲームをPRIDEとするつもりはなく、現実路線を進み始めました。山本KIDや須藤元気などの人気で、総合のほうにも進出し、引き抜き防止の受け皿まで作りました。取ってくる「大型選手」も、チェ・ホンマンやセーム・シュルトのようにある程度動ける選手に切り替えました。ある種これまでの石井流イケイケ戦略から、身のたけ戦略に舵をとったのでしょう。


それでは、この元アメリカンフットボーラーによって引き起こされた「モンスター路線」は何を残したのでしょうか


 まず、「」の部分でいえば、ボブ・サップをサンプルとした人間の成功と失墜をまざまざとファンに見せ付けたことでしょうか。ハングリー精神をもって成功し、巨額のマネーを得た成金は、悪しき誘いにあがらえず、最後には精神を蝕まれていきました。一人の超人の栄光と堕落。サップの展開したリアルヒューマンドラマ(?)は、非日常的な現実としてK-1ファンに生々しく伝わったことでしょう。

 また、曙太郎を中心とした大型選手は、テレビ局が期待した活躍を見せることが結局できませんでした(フジテレビは2007年になってもまだチェ・ホンマンを主役に据えたいようですが)。これによって「パワーや体重があれば強い」という定説は再び疑問をもたれることになったのです。現在では、単にサップが特殊だったと考えられるようになりました。ところが、疑問は生じたものの、現在の王者セーム・シュルトはその体格を十分に生かした選手であり、モンスター級の肉体を持っていることは事実です。そういう意味ではセーム・シュルトこそ「モンスター路線」結実を果たした選手という見方もできます。演出のされ方が他のモンスターとは違うというだけで……。

 「」は、これまた演出方法と絡んでくるのですが、現在の亀駄一家やプロレスなどでよく使用される安い三文芝居をテレビやスポーツ紙で演じることにより、立ち技格闘家の持つ神聖さや、只ならぬ雰囲気というイメージ部分が多いに低き次元に落ちたという部分です。
 これはボビー・オロゴンやプロレスラーをリングに上げる「素人路線」でさらに際立ちました。格闘家のバリューというものが相対的に低まったのです。素人タレントやプロレスラーが売名などを目的にテレビ局の方針に乗っかったことで、これまでアンディ・フグやミルコ・クロコップなどが築いてきた格闘技に対するイメージ悪化は顕著となり、テレビを見るだけの大多数のファンが「そういうものではなかったはずだ」と拒否反応を示したのは、実に納得できる成り行きでした。K-1から総合に格闘技界の流れが移ったのも、心情的に理解できます。

*注意:しかし、PRIDEが行ったK-1含めた多方面に対する引き抜き工作や、自分たちこそナンバーワンであることをイメージ的に植えつけることを目的とした「他団体のイメージ悪化キャンペーン」などはやりすぎだと思いました。今年のPRIDE買収と消滅は因果応報です。

 私が総合、PRIDEのほうに流れなかったのは、「男は立ってこそ美しく、リングに寝そべって戦うなど、ただの喧嘩だ」という考え方があり、立って戦って美しいファイターがいる限り、立ち技を応援したいと思っていたからですが。(もちろんこの考え方は私個人独特のものであるとも理解しています)
 

~次回はモンスター路線の今後

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by the_kakato_otoshi | 2007-11-14 15:18 | K-1

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