この点を疑問に思っている方は多いと思います。マニアの方には常識でも、マニアではない方々にとっては多いに疑問であると思いますので、このあたりかかとおとし的な解説をしてみたいと思います。
御存知の通り、日本のメジャー格闘技業界は縮小の一途をたどっております。
60キロ級トーナメントに沸いたKrushの活況や、日本進出を狙うUFCなど景気の良さそうな話はありますが、FEG一党独裁体制になっているメジャー格闘技の世界は難しい状況にあるということはMMAファン、K-1ファン、共通する認識であることは言うまでもありません。
Dynamite!!では魔裟斗vsアンディ・サワーのリベンジマッチ兼引退試合と、石井慧のプロリングデビュー戦という2大看板を投入しましたが、世間様にはそこまでのインパクトを与えることはできませんでした。
この微妙な状況の理由はなんでしょうか。
やはり、テレビ局との関係という点に私は難しいものを感じるわけです。
テレビ局というのは、かつて情報、文化、楽しみを「発信」する先駆的な役割を果たしてきました。
しかし、今新しいインフラであるインターネットによって、テレビは「ネットの後追い」しかできないメディアに成り下がりました。折しも不景気が重なり、各民放テレビ局は減収減益。株価も下がり、「衰退産業」となっています。
テレビ局は局員の給料や役員報酬を下げず、制作費をカット。つまり、下請けへの支払いを減らす方向で減益に対応しているため、番組の品質は保てず、その結果ますます「テレビっ子」たちを遠ざける結果になっているのはご存知の通り。
さてさて、
既存スポーツ、例えば野球、サッカー、オリンピック関連、そしてK-1など格闘技も、テレビという媒介を通して
世間に認知され、現在の人気を得ています。ですから、テレビとスポーツは切り離せない関係にあります。テレビを通じてここまで大きくなったのです。サッカーの試合はなぜ2時間なのか、野球はどうして試合のテンポアップをしようとしているのか。K-1はなぜ3分3Rなのか。すべてはメディアとの関係で「視聴率」という名の見えないマジックによって決まるものなのです。
K-1の興行は、もともとフジテレビのある番組から発生したものですし、「テレビありき」の競技イベントであることは言うまでもありません。(これを悪いとかいいとかそういう議論は無意味)。何日、何時から何分放送、目標視聴率何%という目的がまずそこにある。
なので、主催者であるFEGは、テレビの放送予定が決まらないと何も発表できないという仕組みができています。スポンサーがついて、予算が下りて、放送枠が決まって、会場を押さえて、ようやく開催できます。選手はその後です。
今はなかなかスポンサーがつかない、予算がおりない時代ですから、どうしても決定が遅れます。
ずるずると滑り落ちるように何もかもが遅れていきます。
だから遅い。
<弊害が凄い>
昨年のDynamiteのカード発表で、かなりギリギリまで調整していたことは記憶に新しいでしょう。
その結果現れるのは何か。
ギリギリのオファーによる選手の準備不足による、試合内容の劣化だけならまだマシです。
近年顕著なのは、知名度だけで競技力がほとんどない選手が簡単にリングに上がって無内容な試合を繰り返すその惨状が見るに耐えない場合があります。これは、何も芸能人ファイターの話ではありません。
例えばアリスターと戦った藤田選手。あまりにもひどいパフォーマンスでした。実際、一晩目を覚まさなかったのですから、そもそも組んではいけないカードだった。
MAXで、クラウスと戦った武田幸三などは、本来リングに上がってよい選手なのでしょうか。あまりの実力差に、クラウスが途中、戦意を失っていました。
K-1ルールで戦った元プロボクサーの西島選手などは、全く競技力が不足していたにも関わらず、アーツやセフォーという名のある選手と戦い、案の定何もできていません。
テレビでは放送されてませんでしたが、ゲガール・ムサシとゲーリー・グッドリッジなんて、ゲーリーに何をしてほしかったのか、まるでわかりません。
その割に、最近は1興行の試合数が増えています。つまり、多くの試合を用意して、面白い試合だけチョイスしてテレビで流すためです。リスク回避込みで、「捨て試合」をそもそも念頭に置いて組み立てているのですから、「リングの充実」には程遠い状況であることに変わりはないでしょう。
だらだらワンマッチが10試合以上もある興行を延々と見せられて、よく我慢してるなぁ。と思います。
昨年のK-1WGP決勝戦などはしっかり中身がつまった大変良いイベントだったと思いますが、3ヶ月前には選手も決まっており、組み合わせも決まっていた。もちろん、立ち技世界最強の選手が集まっているという事実もありましたが、みんながしっかり準備していれば、あれだけの素晴らしいものが見られるという例になったと思います。
ギリギリでたくさんの試合を組み、いいところだけチョイスして放送するスタイルを確立しても、リスク回避という商人の論法であって、中身の詰まった試合を見せてほしいというファンの欲求とは違うのではないでしょうか。それをする必要がないから、DREAMは地上波で放送されない興行のほうが評価が高い。そういう理由があるわけです。
<リスク回避という事情>
サッカー岡田ジャパンを観て欲しいですよ。
岡田監督も、選手も、そして会場のサポーターも誰も楽しくなさそうだ。それではテレビの視聴者が、楽しめるわけはない。ああなってしまう前に、何かの策が必要です。今でも日本代表にエールを送っているサポーターは、よほどサッカーを愛している人だけでしょう。日本の格闘技もいずれそうなってしまう。
「数字を取るため」という大義名分があるのは、誰もが理解しているし、対案を出せと言われても、なかなか難しい。その世界のことを深く知らないから、我々ファンは表面上に滲みでてくる舞台裏の事情を、汲み取るしかない。
今、私が感じるのはリスク回避を優先する主催者とテレビ局の「防衛本能」です。
そのしわ寄せが、まともなファンのニーズとまるでマッチしないアンバランスなマッチメイクを生み出すことになっているのです。(プロレスから来たと思われる格闘ファンの無知蒙昧もそれに拍車をかけているかもしれません)
今、日本の格闘技を動かしているのは、格闘ブームのときに力を伸ばした人たちです。
いつもの選手層、いつもの会場、いつもの煽りV、いつもの演出、いつものリングコール、いつもの爆発。いつもの物販……そしていつものファン。
何も変わらない景色を危うく思ってやったことといえば「リングを網にしてみた」程度。そりゃ違うだろ。
成功経験をいつまでも引きずって、根本的な部分に目を向けないテレビ局、主催者、そして選手のマネージャーらには、いずれ退場していただく以外にありません。
「盛り上げるだけの選手」「お願いしやすい選手」「どんなオファーも断らない選手」の共演はもううんざりじゃないのか? みんな。
試合や選手とは何も関係がない、リングサイドのドタバタに付き合うのは、できれば昨年限りとさせていただきたい。
私が盛り上げたいK-1が、しるこサンド即売会になる前に、
根本的な何かを考える必要はないのでしょうか。
ご意見があれば、是非コメント欄に。
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